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3年ぶりにブログを書こうという気になったのは、自分よりもずいぶん若い知り合いが外国で毎日のように人生と取っ組み合っているブログを見たから。取っ組み合っている彼は苦労してるけど、その姿がまぶしくて羨ましかった。

今の私の暮らしは大きな波風もなくただ平坦だけど、平坦なりの感情の揺れ動きを少しずつ記録してみたくなったのだ。何年か後に見たら、ふとその時のことを思い出してニヤリとできるように。

桐野夏生「バラカ」読了。

ドバイの赤ちゃん市場で日本人に買われた「バラカ」は、身勝手な大人に翻弄されながら大震災前後を生き抜いていく。原子力発電所が震災で崩壊し東京すら警戒区域となっているデフォルメされた日本の有様は、一歩間違えばありえたかもしれない現実で薄ら寒い。

毎度ながら桐野夏生が秀逸なのは、非常に利己的な「嫌な人間」の描写だ。一人が嫌だから金で子どもを買う沙羅、恋人の親友と関係し、妻が津波の犠牲になっても涙すら流さず、バラカを物のように扱う川島。その野蛮さ、下品さにおぞましさを感じながら、それでも自分の中のどす黒い感情を目覚めさせるのか、どうしてもその「嫌な人間」から目が離せなくなる。 

東京島」同様、エピソードは若干蛇足に感じられなくもないが、650ページに渡る長編を飽きさせないストーリー構成は見事。

桐野夏生は、「ハピネス」みたいな本当にありそうな話と、「バラカ」みたいなありそうで無さそうな話があるが、本当にありそうな話の方が個人的には好き。これからも女の業を書き続けていただきたい。

バラカ